【連載】人生を変える「音」の神秘 Vol.4 ── デジタル圧縮と音質劣化の真実

【連載】人生を変える「音」の神秘 Vol.4 ── デジタル圧縮と音質劣化の真実

ここまで、Vol.1では主に「電磁波」が及ぼす影響、Vol.2ではそもそも「音質」とは何なのか、Vol.3では音質に大きく影響する「ケーブル」についてお伝えしてきました。

様々なことを書かせていただきましたが、大切なことはシンプルです。

〝音はエネルギーである〟という点です。

人間の五感は思ったよりも騙されやすく、表面的に「良い!」と感じることがあります。

たとえば、強く味付けされた料理を食べると、その瞬間は美味しい!と感じるかもしれません。

しかし、繊細な余韻はあるか?エネルギーに満ち溢れて元気になったか?という基準で見た時に、違和感を持つ人もいるでしょう。

音も同様に、いわゆる「ドンシャリ」と言うのですが、低音がドンドン響いて、高音がハッキリしていたら、なんとなく良い音に感じるかもしれません。

しかし先ほどの料理のたとえ同様に、それをずっと安心して聴いていられるか?大自然の音を浴びたときのように元気になるか?と考えた時に「なんか違うな」と気づく方もいるはずです。

目で見える・耳で聞こえる、そういった「分かりやすいもの」を超えて、背景(エネルギー)を感じる。

そうすることで、物事の本質に迫っていくことができます。


良い音で音楽を楽しむには

さて、その上で、今回はよくある質問、「音楽は何で、どのような形式を聴いたら良いでしょうか?」にお答えしたいと思います。

ここまでを理解していただくと、音に関してはシンプルです。

それは、基本的に「音のデータ量が大きいほど、エネルギーが大きい」という考え方です。

当たり前のように感じられるかもしれませんが、今の音楽業界には様々なトリックが潜んでいますので、今回はそちらを見ていきましょう。

少し専門的な話も入ってきますので、なるべく分かりやすくお伝えしますね。


「ハイレゾ」という言葉のトリック

〝音質〟の話題になると出てくるのがこちら。  
近年、「ハイレゾ対応」を謳(うた)う製品が急増しましたね。

「ハイレゾ」と聞くと、なんとなく「いい音なんだろうな」と思ってしまいますが、これは一体何なのでしょうか。

ハイレゾとは、CDの規格(44.1kHz / 16bit)を上回る情報量を持つ音源のことです。  
ポイントは、2つの数字が関わっていること。

ひとつは「サンプリング周波数」。

1秒間に何回、音の波を記録するかという、いわば時間方向の細かさです。  
CDは44,100回。ハイレゾでは96,000回や192,000回になります。

もうひとつが「量子化ビット数(ビット深度)」。 

これは、音の強弱──ささやき声から大音量まで──をどれだけ細かい段階で記録するかという、深さ方向の精度です。

以下の図で言うと、黒い棒の数がサンプリング周波数で、黒い棒の密度が量子化ビット数です。

CDの16bitは約6万5千段階ですが、ハイレゾの24bitは約1,677万段階。   
桁違いのグラデーションで、微細な息遣いからオーケストラの轟音までを表現できるとされます。

数字の上では、たしかに「精密」です。

しかし、ここに落とし穴があります。


「器」は立派でも、中身が届かない?

ハイレゾという「規格」は、たしかに高性能な器です。   
問題は、その中身をわたしたちの耳元まで届ける過程にあります。

多くのストリーミングサービス(音楽配信サービス)では、膨大なデータをスムーズに届けるために「圧縮」がおこなわれます。

圧縮によって、音の情報量を減らし、その分、データを軽くしているのです。

たとえば、YouTubeで音楽を聴く場合、もとのデータは10分の1から20分の1にまで圧縮されています。 

「ハイレゾ対応」と表示されていても、それはあくまで「元のデータの形式」や「再生する器の大きさ」を示しているにすぎません。

実際にわたしたちに届く1秒あたりのデータ量(ビットレート)は、大幅に絞られていることがあるのです。

ここで混同しやすいのが、ハイレゾの規格を表す「ビット数(24bitなど)」と、通信で実際に届くデータ量を表す「ビットレート(kbps)」の違いです。

(少しややこしいのですが、こうした用語や数字で煙に巻いている側面があります。)

この2つは名前は似ていますが、まったく別のもの。  
料理でたとえてみましょう。

「100種類の食材を使った最高級レシピ(ハイレゾ規格)」があるとします。   
このたとえでいうと、サンプリング周波数は「レシピの工程の細かさ」、ビット数は「使える食材の種類の数」にあたります。  
どちらも問題ないとします。

ところが、実際に届いた食材の箱を開けてみたら、食材が5種類しか入っていなかった──。   
これが、ビットレートが絞られた状態です。

いくらレシピが精密で、さらに食材の種類が豊富でも、届く量(中身)がスカスカなら、本来の味は再現できないですよね。


要はどういうこと?

少し分かりにくいでしょうか。

もっと話をシンプルにして、音楽データのファイルサイズを見てみましょう。

圧縮されていない音源は、1曲で通常、数十MBのファイルサイズがありますが、mp3などに圧縮した音源は、数MBになります。

実際に、わたしのパソコンの中に入っている音楽のファイルサイズを見てみます。

▽こちらは、圧縮する前のCDから書き出した素の状態。

▽次に、mp3に圧縮した状態。

データ量が、55.9MBから5.1MBに減っていますね。  
これは音の情報量が、約10分の1に削られていることを示しています。

以上は分かりやすい例ではありますが、ハイレゾ「対応」の機器で再生しても、音楽が圧縮されてデータ量が小さくなっていたら、ほとんど意味がないということです。

また、「ハイレゾ」「高音質」と〝書いて〟いても、ファイルサイズが小さい場合は、どこかの課程で何かが削られている可能性が高いのです。


無線イヤホンで、さらに削られる

ここまではストリーミング配信や圧縮された音源の話でしたが、じつはもうひとつ、見落とされがちな「関門」があります。

それが、Bluetooth(ブルートゥース)です。

いま、多くの方が無線イヤホンで音楽を聴いていますよね。 

あの小さなイヤホンとスマートフォンのあいだでは、音のデータがBluetoothという無線通信で送られています。 

なんとこのとき、データはさらにもう一段、圧縮されるのです。

CDの音をそのまま送るには、1秒あたり約1,411kbpsものデータ量が必要です。 

ところが、もっとも広く使われているBluetoothの伝送方式(SBC)では、最大でも約328kbps。 iPhoneで標準的に使われるAAC方式でも、約320kbpsが上限です。

つまり、CDの情報量の「4分の1以下」しか伝送できていないわけです。

しかも、これはストリーミングで圧縮された「後」のデータに、さらに重ねてかけられる、いわば「二重圧縮」。 

AAC方式であればたとえば、320kbpsのデータがあるとして、それをそのまま送るのではなく、320kbpsのデータを1回展開し、Bluetooth用に再圧縮して送っているのです。

もとのハイレゾ音源からすれば、耳に届くころには、ほんのわずかな情報しか残っていないことになります。

ソニーが開発したLDACという方式を使えば最大990kbpsまで伝送できますが、それでもCD品質の約70%。   
しかも、LDACは送る側と受ける側の「両方」が対応していないと機能せず、多くの場合は自動的にSBCやAACが選ばれています。

わたしたちは「ハイレゾ〝対応〟イヤホン」を使っていても、実際には、圧縮された音源を、さらにBluetoothの細い通り道を通って二重に削られた後の、ごくわずかな情報で音楽を聴いていることが多いのです。


圧縮が「捨てる」もの

では、圧縮によってなにが失われるのでしょうか。

デジタル音声の圧縮技術は、「人間に聴こえないと判断した音」を間引くことでファイルを軽くしています。 しかし、この「聴こえない」という判断は、あくまで統計的な平均値に基づいたもの。

ひとりひとりの耳の感度や、そのときの集中状態、再生音量によって、「聴こえる」「聴こえない」の境界線は変わります。

さらに厄介なのが、「プリエコー」と呼ばれる現象です。

圧縮処理の都合上、鋭いアタック音(たとえばカスタネットのパチッという音)の「前」に、本来存在しないノイズがにじみ出てしまうことがあります。

人間の耳は、音が鳴った「後」のノイズにはある程度鈍感ですが、音が鳴る「前」のノイズには敏感です。

こうした圧縮の人工的な副産物は、スペック表には現れません。

しかし、「なんとなく音がペラペラする」「空気感がない」「長時間聴いていると疲れる」

──そういった違和感の原因になり得るのです。


CD&有線の実力

では、家庭でいい音を聴くにはどうすればよいのでしょうか。  
これは、SIRIUSをお持ちの方からも、よくご質問をいただきますので、こちらでお答えさせていただきます。

意外に思われるかもしれませんが、シンプルで確実な方法の1つは「CDを、CDプレイヤーで再生すること」です。

CDは非圧縮。間引かれることもなく、録音された情報が、ほぼそのまま再生されます。  
また、複製によって失われる情報量やエラーも少なくて済みます。

いま、多くの方がスマートフォンのストリーミングで音楽を聴いていますが、じつは情報量という観点では、手元にあるCDのほうが豊かな場合が少なくありません。

「ハイレゾだから高音質」と判断する前に、まずはCDを改めて聴いてみても良いかもしれません。意外な音質の良さに驚かれると思います。

そして、イヤホンやヘッドフォンを使う場合は、有線のものをおすすめします。

先ほどもお伝えした通り、いくら高性能で高額なイヤホンであっても、Bluetoothを使う限り、音のエネルギーは大きく減ってしまうからです。


有線ヘッドホン&非圧縮音源

CDプレーヤーやスピーカーを用意するのは、ちょっと...という方で、普段はスマートフォンやパソコン、ウォークマンなどで音楽を聴いている方に、わたしがおすすめしたいのがこちら。

Uniwa Headphoneです。

おすすめする理由はシンプルに、有線であること。

そしてもちろん、そのケーブルはVol.3でお伝えした高品質素材「PC-TripleC」です。

さらに特筆すべきは、ハウジングが本物の「木」である点であり、有機的なエネルギーを全身で感じていただけます。

Vol.2でも少しお伝えしましたが、木の繊維には微細な空洞があり、音がその中を通るとき、機械では再現できない複雑な倍音構造(1/fゆらぎ)が自然に生まれ、それが身体にフィットした音をつくってくれます。

加えて、ドライバーユニット(電気信号を振動に変換する心臓部)は、70mmという超大口径を採用。  
普通は40~50mm程度であることを考えると、非常に大型のものとなります。

つまり、音の「エネルギー」を、シンプルに、最大限届けるように作られています。

わたしも今まで様々なヘッドホンを試してきましたが、これは本当に異次元で、単なる「音質」を超えて、耳を通して全身が音の粒子に包まれるような「体感」があります。

変換プラグを使用すれば、3.5mmジャックがないスマホでも使うことができますし、音質を重視するならシンプルにパソコンなど再生機器から直で接続し、圧縮していない音源で楽しんでいただくのをおすすめします。

非圧縮の音源を楽しんでいただく場合は、CDからパソコンに取り込む際には、「WAV」という形式を選択し、「mp3」「AAC」「m4a」「wma」といった圧縮される形式を選ばないようにしてください。

また、「Apple Music」や「Amazon Music」「Spotify」などの配信サービスを利用される場合は、「ハイレゾ」「ロスレス」など記載のある設定にして、圧縮されていない音源を再生していただくのがおすすめです。


さいごに

ここまでお読みの方で、もしかすると、そんなに変わるの??と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

わたしも以前はそう思っていた人間です。

しかし、これが実際に比べてみると、圧倒的な違いに驚くことになります。

たとえば、先ほど、mp3では「人間の耳では聞こえないところからカットする」という話がありましたが、実際に聴いてみると「本当に??」と思うほど、音が変わります。

特にSIRIUSで音楽を再生する場合、それが顕著に感じられると、個人的には思っています。

これはおそらく、SIRIUSの繊細さと高い解像度によって、音源の違いがよりはっきりと出ているのだと想像しています。

特定の音しか聴いていないと、それが基準・普通になりますが、比較したときに、「こんなにも違うのか...」となります。

機会があれば、視聴会を開催して、音の比較もできたら楽しいかな、と思っています。


Uniwa Headphoneはこちらから