【連載】人生を変える「音」の神秘 Vol.2 ── 耳は、音のほんの一部しか聴いていない?

【連載】人生を変える「音」の神秘 Vol.2 ── 耳は、音のほんの一部しか聴いていない?

「スピーカーを変えただけで、同じ曲が全く違って聞こえた」

そんな経験はありませんか?

どちらのスピーカーもスペックは似たようなものだから、音もそこまで変わらないはず。
なのに、あるスピーカーで聴くと胸が震えるのに、別のスピーカーではただ「鳴っている」だけに感じる──。

そもそも「良い音」と「悪い音」の違いは何なのか?
〝音質〟の秘密に迫っていきます。


前回の記事『人生を変える「音」の神秘 Vol.1 ── 現代人を静かに襲う〝見えない波〟の正体』はこちらから。


「音質」の正体

オーディオの世界では一般的に、「良い音」を数値で測ろうとします。
周波数特性がフラットかどうか。ノイズがどれだけ少ないか。歪み率は何パーセントか。
もちろん、それらは大切な指標(しひょう)です。

しかし、実際には聴いてみた体験とスペックが一致せず、「なんか違うな」と感じた経験のあるひとは少なくないでしょう。
これは、気のせいでも、オカルトでもありません。

じつは、現代の測定技術には構造的な限界があります。

たとえば「THD+N(全高調波歪率+ノイズ)」と呼ばれる、歪みの指標があります。
でもこれは、たった一つの周波数、一つの音量で測ったものにすぎません。

実際の音楽は、何十もの楽器がさまざまな強さで同時に鳴り響く、きわめて複雑な波。
一枚の写真と動画では情報量が大きく違うように、部分的な測定値だけでは、音の「体験すべて」を捉えきれないのです。

さらに、異なる周波数の音が、同時に鳴ったときに生まれる音の歪みもあります。
これは通常のスペック表には載りませんが、原音にはない不協和音が混じるため、音楽のハーモニーを濁(にご)らせます。

スペック表では同じに見える二つのスピーカーが、まるで別物に聴こえる理由の多くは、こうした「測定されていない差」にあるのです。

ここで、Vol.1でもご紹介した「温度」のたとえを思い出していただけると分かりやすいと思います。
同じ100℃でも、焚き火の100℃と電子レンジの100℃では、肌で感じるものがまったく違う。

音も同じです。

音程が同じでも、その音を生み出しているエネルギーの「質」──いわば、ぬくもりのようなもの──は、スペックには現れません。

「表記上は高スペックのスピーカーでも、ずっと聴いていると疲れる」
といった話を聞くことがあるのですが、それはもしかすると、そのスピーカーが出しているエネルギーの「質」に何かがあるのかもしれません。

耳だけが「聴いている」わけではない

さて、ここからが今回の本題です。

わたしたちは「音は耳で聴くもの」だと思っています。
しかし、音の正体は「空気の振動」──つまり、物理的なエネルギーです。

そのエネルギーを受け取っているのは、耳の「鼓膜(こまく)」だけではありません。

人間の身体のおよそ70%は水分でできています。
そして音(縦波)には、空気中よりも水中のほうが4から5倍速く伝わるという性質があります。


媒介物 温度 速度 (m/s) 速度 (km/h)
空気 15℃ 約 340 m/s 約 1,225 km/h
淡水 25℃ 約 1,497 m/s 約 5,389 km/h
音の速度比較(空気と淡水を比較)

簡単に言うと、音は、空気が苦手なのです。
音は、水の中の方が早く・遠くまで・効率的に動くことができます。

イルカやクジラが数キロ先の仲間と「音」でやり取りできるのも、水が音を効率よく伝える媒質だからですね。

わたしたちの身体も水分が多いので、音が当たった瞬間に全身の隅々まで、音のエネルギーが伝わります。

こう聞くと、「でも、空気中の音はほとんど皮膚(ひふ)で跳ね返されるのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

たしかに、物理学的には空気から皮膚への音の透過率(とうかりつ)はわずか0.1%ほど。
99.9%は反射されてしまいます。

ところが、ここに興味深い仕組みがあるのです。

人間の皮膚や骨の内部には、「パチニ小体」と呼ばれるセンサーがあります。
指先だけでなく、骨の表面、関節、内臓を支える膜にまで存在するこのセンサー。
なんと、わずか10ナノメートル(髪の毛の1万分の1ほど)という微細な振動にも反応します。

さらに、2024年にハーバード大学が発表した研究では、身体で受け取った振動が、脳のなかで聴覚の情報と統合されていることが明らかになりました。

つまり、脳は「耳から入った音」と「身体で感じた振動」を合わせて、ひとつの「音の体験」をつくりあげている。
わたしたちは文字通り音を〝全身で聴いている〟のです。

なのでイメージとしては、耳は「音のアンテナ」の一つにすぎません。
全身という巨大かつ繊細な「水のスポンジ」もまた、音のエネルギーを吸収し続けている。

SIRIUSの開発者のY氏が「耳で聴いている音は、ごく一部」と表現するのは、このエネルギー全体を捉えた視点なのだと思います。

スペックでは測れない「音の力」

ここまでの内容で、「耳で聴こえる音は、音のエネルギーの、ほんの一部にすぎないこと」を理解いただけたと思います。

では、数値では測れない「音の力」とは、いったいなんなのでしょうか?
ひとつの手がかりが、「ハイパーソニック・エフェクト」と呼ばれる現象です。

これは人間の可聴域(約20kHz)を超える超高周波成分(ハイパーソニック・サウンド)を含む音が脳の基幹脳や身体を活性化し、リラックス効果・免疫力向上・情動の改善をもたらす現象のこと。
簡単に書くと、「聴こえない音」を身体の表面から浴びると、脳の深い部分の血流が増え、リラックスを示す脳波(α波)が増加することがわかったのです。

これは、バリ島のガムラン音楽(10万Hzを超える超高周波を含む)を使った実験で発見されたと言います。

しかも、この効果は通常のヘッドホンでは起きませんでした。
スピーカーで聴いたとき──つまり、身体全体で音を浴びたときにだけ起きた。
耳に聴こえない超高周波を、体表面が受け取り、脳がそれを「快」として処理していたのです。

このことは、先ほどの「全身で聴いている」という話と、ぴたりと符合(ふごう)しますね。

良いスピーカーとは

ここまでの話を踏まえると、「良いスピーカー」の基準が変わってくるのではないでしょうか。

一般的なオーディオ機器は、「鼓膜」のセンサーを基準にした計測値で「良い音」を定義しています。
つまり音は「耳」で聴くものだ、という前提があるわけです。

しかし、音がエネルギーであり、わたしたちが全身でそれを受け取っているのだとしたら──大切なのは「スペック」ではなく、エネルギーの「質」ですよね。

天然の無垢材が生み出す「いのちの振動」

スピーカーは振動して音を出す装置ですから、振動する「素材」が音のエネルギーの質を決めます。

いま市場に出回っているスピーカーの大半は、樹脂やプラスチック、あるいはMDF(木の粉を接着剤で固めた板)で作られています。
石油由来の人工素材が振動すれば、そこから出るのは人工的なエネルギー。
一方、天然の木が振動すれば、自然の響きが生まれます。

名器と呼ばれるバイオリンが美しいのは、数百年を経た木材の響きが、人間の耳には聴こえない超高域まで豊かな「倍音」を生み出すからです。

前回少し紹介させていただいたSIRIUSは、この楽器づくりの発想で設計されており、ウォールナットの無垢材をくり抜いてスピーカーボックスとし、自然の中から生まれた素材で構成されています。

木の繊維には微細な空洞があり、音がその中を通るとき、機械では再現できない複雑な倍音構造(1/fゆらぎ)が自然に生まれます。
この「ゆらぎ」こそが、小川のせせらぎや木々のざわめきに感じる心地よさの正体であり、人間の生命のリズムと共鳴する振動なのです。

通常のオーディオ機器は、20kHzあたりまでの再生能力を持っていますが......
SIRIUSは、その約3倍の帯域をカバー。

「耳で聴く装置」ではなく、「エネルギーを空間に満たす装置(その中で、身体も一緒に振動する装置)」として設計されています。

空間を変える

SIRIUSのもうひとつの特徴は、「スピーカーの前で音を聴く」ことを前提にしていない点です。

一般的なスピーカーは、リスニングポイント(最適な聴取位置)に座って聴くことを想定しています。
一方のSIRIUSは、部屋全体を音のエネルギーで満たし、空間そのものを変えることを目指しています。

Vol.1でお話しした「電磁波で荒れた空間に、美しい縦波を満たす」という考え方。

SIRIUSの無垢材が生み出す豊かな倍音は、空間に充満する人工的なノイズ成分と合成され、そのエネルギーを穏やかなものに変えていく──開発者のY氏はそう語ります。

「スピーカー」というよりも「空間の波動をととのえるための装置」と言った方がいいのかもしれません。

アイデア閃く空間

こうして空間をととのえ、空間に味方されることは、人生を好転させるための1つの手段でもあります。

よく、いいアイデアを閃いたときに「降りてきた!」と言ったりしますよね。
じつは、空間にも意識があって、多くのひらめきや気づきというのも、空間から降ってくるものなのです。

では、どうしたらそんなアイデアが閃く空間にすることができるのか?

そのひとつは、空間をまるで神社のように見立てて、神域として接することです。
これは、ゆにわマートでも販売している『龍の神様と出会うたったひとつの方法』に詳しく書いてあります。

神道(しんとう)の言霊は“振動(しんどう)”。

玉砂利を踏みしめる足音や、本殿の前で打つ柏手(かしわで)、お神楽(かぐら)の笛や太鼓。そして、風や鳥の音。
神社に行くと神聖な気持ちになるのは、こういった音の「振動」によって、心が清められるから。

CD『UNIWAVE〈ユニウェーブ〉伊勢』は、そんな神聖な響きを表現したサウンドです。

おわりに──感覚を取り戻す

わたしたちは、知らず知らずのうちに、音に対する感覚を鈍らせてきました。
人工的な素材から出る音に囲まれ、圧縮されたデータに慣れ、スペックで「いい音」を判断するようになった。

しかし、本来の音とは、耳だけで聴くものではなく、空間と共に振動し、全身で浴びるエネルギーです。

SIRIUSの音を初めて聴いたとき、多くの方が「ずっと聴いてたい音ですね」とおっしゃいます。
それはもしかすると、忘れていた本来の感覚を思い出し始める瞬間なのかもしれませんね。


次回予告: Vol.3では、〝音質〟についてさらに深く考えていきます。「ハイレゾ」は本当に良い音なのか?「Bluetoothイヤホン」はどうなのか。現代のオーディオの特徴と真実。シンプルに〝良い音〟を楽しむ方法と、それを人生に活用するヒントをお届けする予定です。

佐藤想一郎